倉敷翠松高校ってどんな高校?

在校生・先生・卒業生、翠松高校をよく知る三者からのリアルな声を聞いてみよう!
古賀 康彦 先生
専門科目:英語
サッカー部 顧問、コーチ
目標
倉敷翠松高校サッカー部のレベルをさらに高める
Vol.02
先生

サッカーを通して育む、自分で考え、動ける力

2024年2月から、倉敷翠松高校で、週に一度、外部顧問という形でサッカー部の指導に携わっています。それに先立ち、2023年からは岡山県で始動した「FCガレオ玉島のプロジェクト」に参画し、現在はU-15の監督も務めています。

2023年に倉敷へ来たタイミングで、周辺の環境や学校について調べていたこともあり、倉敷翠松高校の存在は知っていました。なんとなく「ここで何かできたら面白そうだな」というイメージを持っていた中で、偶然いただいたご縁から、サッカー部の指導に関わることになりました。

(※下の写真はFCガレオ玉島U-15/ベースボール・マガジン社提供)

全国高校サッカー選手権大会岡山予選で「ベスト4」達成

初めて翠松高校のサッカー部のトレーニングを見て、率直に感じたのは、県内でベスト8・ベスト4を狙えるだけの潜在能力がある、ということでした。一方で、集中力という点では課題も感じました。ただ、それは裏を返せば、指導次第で大きく伸びる余地があるということです。

具体的な指導にあたっては、私が大切にしている「エコロジカル・アプローチ」の考え方をベースにしながら、倉敷翠松高校の選手たちに合う形を取り入れています。「エコロジカル・アプローチ」とは、環境との相互作用の中でトレーニングしていく考え方です。分かりやすく言うなら、感覚的にはストリートサッカーに近いものだと思っています。

例えば、ブラジルのストリートサッカー。ボコボコの地面のグラウンドで、年齢も経験も違う人たちが集まり、その場にあるものを工夫して使いながらプレーしてきました。そうした環境の中で育った子どもたちが、高い能力を身につけ選手として大成してきたことは、よく知られています。決められた型にはめるのではなく、その環境・状況の中で、自分で考え、動く力を育てていく。そんな考え方のトレーニングです。

この約2年間で、生徒たちの練習に向き合う姿勢は、確実に変わってきていると感じています。以前は90分の練習でも集中が続かない場面がありましたが、今では70分、80分と、集中力を保ったまま取り組めるようになってきました。

結果的に、2025年の秋に開催された「第104回全国高校サッカー選手権大会岡山予選」でベスト4まで勝ち進むことができました。もちろん、それは私の力ではなく、日常的に生徒たちと接している先生方の指導の積み重ねも大きいと思っています。

感覚や根性だけに頼らない、論理的なトレーニング

指導するうえで、私がいちばん大切にしているのは、その場にいる選手たちの段階に合ったトレーニングを組み立てることです。

それは、体力・技術面だけでなく、ものごとの考え方や理解の段階も含めて、今どこにいるのかを見極めることです。いきなり難しいことを詰め込むのではなく、「なぜそうするのか」と生徒一人ひとりが自分なりに考える土台をつくることを意識しています。

古くは「行け、走れ、蹴れ、戦え」といった言葉でチームをつくってきた時代もあります。現代では、感覚や根性だけに頼るのではなく、どうすれば力が伸びていくのかを、できるだけ論理的に捉えることが大切だと感じています。エビデンスに基づきながら、選手一人ひとりがそれぞれの状況の中で考え、好奇心や意欲を育てていけるような指導を心がけています。

教育とは、自分で考え、選択し、決断する力を育てること

これからの目標として掲げているのは、倉敷翠松高校サッカー部のレベルをさらに高めていくこと。そして将来的には、Jリーガーを輩出することです。

レベルを高めるとは、単に勝利の数を増やすということではありません。私の願いは選手一人ひとりが自立した存在として成長していくことです。どの育成カテゴリー(年代やチームの枠)を指導するうえでも共通していますが、自分で考え、選択し、決断する力を身につけていってほしいと思っています。

教育とは、そうした力を育てることなのではないかと思いながら、日々指導に向き合っています。

高校時代は、自分で考え、動いた経験を大切に

これから高校に入学するみなさんには、漠然とでもいいので、何か一つ目標を持ってほしいと思っています。三年間は本当にあっという間です。卒業する頃に自分がどうなっていたいのかを少しでもイメージしておくことが、毎日をどう過ごすかのヒントになると思います。

私自身、高校時代を振り返ると、「もっと大人を恐れず、さらに大胆に行動してもよかったのではないか」と感じることがあります。当時、自分で考えて動いたことが、必ずしも肯定されるわけではなかった。その悔しかった経験が、今の自分の指導のあり方につながっています。

だからこそ私は、生徒が自分で考えてトライしたことや、勇気をもって一歩踏み出した行動そのものを、しっかり認めたい。その経験は、きっとこれからの自分をつくっていくはずです。

【著書紹介】誰もが何らかの制約の中で生きている

『サッカーのエコロジカル・アプローチ トレーニングメニュー集 〜制約が選手を育てる〜』古賀康彦:著、坪井健太郎:監修/ ベースボール・マガジン社
「エコロジカル・アプローチ」という理論は、少しづつ知られるようになっていましたが、現場では、その理論をどのように運用すればいいのか迷っているとの声を多く聞きました。そこで、現場の人の手助けになるように、FCガレオ玉島で実践しているメニューを紹介しようと思い、書籍化に至りました。

この本で最も伝えたいのは、「制約の中を旅する」という考え方です。人は誰でも、何らかの制約の中で生きています。生まれた環境、生まれ持った身体、置かれる立場……。制約の形は人それぞれで、優劣はありません。大切なのは、その制約の中でどう考え、どうもがき、どう進んでいくか。

トレーニングにおける「制約」で言えば、それは選手の可能性を縛るものではなく、考える力や創造性を引き出すきっかけになります。制約の中で答えを探し続ける。その過程こそが、成長につながると感じています。